「くまとやまねこ」という絵本をご存知でしょうか。
モノクロで、儚げな印象の表紙。
タイトルが「くまとやまねこ」なのに、表紙には熊と…鳥?
あらすじを少しだけ。
物語の始まりは、仲の良かった友達の「死」。
主人公の「くま」は、仲の良かった友達の「ことり」を亡くしたところから始まります。
くまは悲しくて、その事実をどう受け止めたらいいの分かりません。
ことりを木箱の中に納め、木箱の中のことりと一緒に過ごします。
それを見た森に住む動物たちからの「辛いけど、ことりのことは忘れなくっちゃ。」という、言葉。
くまは自分の家に閉じこもってしまい、暗い部屋でいく日も過ごして・・・
ふと、部屋のカーテンの外が明るいことに気がつきました。
カーテンを開け、外に出たくまが出会ったものとは・・・。
この絵本のテーマは「死」。
子どもよりは大人向けの内容かなぁと思いました。
さらに言うと、身近な人・大切な人を亡くした経験のある方に特に響く内容。
人の死を受け入れる覚悟、時間の長さは人それぞれ違います。
絵本の中で、くまがカーテンを開けるまでの時間ですね。
個人的には、このカーテンを開けることに苦労している方が多いと思うので、もう少しその辺の深堀があっても良かったのかなと思います。
とはいえ、自分の道は自分で切り開くしかないし、ここだけは本質的に誰も助けられないですもんね。
私自身も立て続けに肉親や友人を失った経験があるので、あの時自分はどうだったか、どのように消化したのかを改めて考えました。
さらにこの絵本の世界観を醸し出している、静かな儚げな絵。
この静かな空気にどっぷりと浸れます。
表紙の、くまと小鳥がそれぞれ違う方向を見ているのも、読み終えた後に再度見るとグッときますね。
この本と出会ったのは、たまたま遊びに行っていた公共の広場。
そこにあった3冊の絵本の中から、隣に座った男の子が読んでくれた絵本が「くまとやまねこ」。
もちろん、お母さんも横にいて聞いていましたが、お母さんは辛くて最後まで読めなかったと話してくれました。
彼は5歳で、覚えたての字を一生懸命読んでくれました。
なぜこの本をチョイスしてくれたのかはわかりませんが。笑
きっと内容はまだ理解できてないでしょうが、大人になっていつか、どこかで思い出してくれたらいいな。
ちなみにその男の子とはその後も何度か会って、今も絵本以外に沢山の出会いをもらっています!
私の母が絵本が好きで、子供の頃、家にはたくさんの絵本がありました。
その中でも「100万回生きた猫」は、大人になって自分で買い直したくらい好きになった絵本。
その絵本に匹敵するぐらいパンチ力のある絵本でした。
こんな気持ちに、大人になってからも出会えるなんて。
いや、大人になったからこそ出会えたのか。
5歳の少年と別れて自宅に帰った夜、「くまとやまねこ」を手にした私は号泣しながら、もう1度、くまの旅立ちを見守りました。
この絵本は、人に贈るのもいいかもしれませんね。
でもその時は、タイミングも大事かなと思います。
身近な人を亡くしてすぐには、辛すぎるような…。
カーテンを開ける頃のタイミングを見計らって、是非!